「山をやっている」と以前は厳しい小屋番さんなどに到着が遅いと叱られたなどというエピソードに事欠かない。山での行動の基本は早出・早着であり暗くなってから行動するなどはもってのほかとされている。より安全に登山をするのであれば当然である。
この時は昼過ぎに登り始めて日が少し傾き始めたころに到着したので、遅出早着といったところであろうが到着した先は何もない雪原であるので寝床作りをする必要がある。寝床と言っても縦200cm × 横90cm × 深さ30cm程度の穴である。これをだいたい15分程度で完成させるのは雪崩講習や日々のバックカントリーでの雪崩対策で培った経験によるものが大きい。掘り出した雪のブロックをギリギリに積むことで掘った以上の高さを確保できる。この屋根もないオープンスカイの四角い空間がこの時の城となる。屋根をつけたとしても1時間も完成に要さないが、屋根をつけると湿気がこもって天井からポタポタと水滴が落ちてくることになるので、雪も雨も降らない夜はこのオープンスカイスタイルが好きなのである。
そうこうしていると日が落ち始めて、この時は日本海に太陽がジュッと音を出しそうなくらい見事に沈んでいった。私の城からは北側はひらけていて東に鳥海山・西は日本海となっている。日が沈んだ後は秋田や由利本荘の街明かりが灯る一方で一人山中に取り残されたが不思議と街との繋がりを感じて心細さなどはなかった。
この日は深夜1時過ぎに月が沈み、東の空に天の川が浮かんでくる予報に合わせて夕方の撮影を済ませたら、ウイスキーを掘った雪がクラッシュアイスの代わりとなる「ウイスキーミスト」にして飲んで寝ることにした。横になると暖かくはないが、築いた壁が風を遮ってくれるので寒さはそんなにないのだが、ちょうど真上にある満月に近い大きさの月が想像以上に眩しかった。
寝たり起きたりを繰り返しながら12時前に起き出して天の川を撮影したが、その写真は別の機会で披露をしたいと思う。撮影をしていると言っても、カメラをセットし撮影をしていることを確認するとやれることはないのでまた入城してしばらく籠城を決め込んだ。
そんな撮影を見守る深夜2時、山からの風に乗ってタバコの匂いがした。本当にだったが匂った。あたりに誰かいるのかと見渡したが、ヘッドライトの灯りなどはなくあたりは静寂に包まれていた。怖いという感じはなく雲ひとつない星空の下、穏やかな時間が過ぎていて不思議と「誰か来たのかな」くらいの感覚だった。
朝も4時くらいになると東の空がうっすらと明るんでくる。撮影自体はその前から行なっているが、カメラ2台持っているので明るくなってきた周辺を撮影することにした。鳥海山の向こう側に太陽が登り始めたところを城とともに撮影した。
早出早着が基本の登山ではあるが、体力に加えてセルフレスキューなどの技術が合わさることで機動力が発揮できる。こうした機動力をフル活用した撮影にストーリーを加えるスタイルが私の個性になりつつある。
朝の撮影と食事を済ませて、途中登ってくる知人などにも会いつつ下山した。昼過ぎには帰宅するなど、まさに早出早着を体現した。
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投稿を表示一見寒そうなお城ですが、夜空の眺めは格別でしょうね!想像するとワクワクします。
タバコの匂いはちょっと不思議ですね。(^^;