中沢 賢治 写真展「Pakistan - 周縁から都市へ」
<ニッコールクラブ会員展>
会場:ニコンプラザ東京THE GALLERY
会期:2026年6月23日(火)~2026年7月6日(月) 日曜休館
*10:30~18:30(最終日は15:00まで)
今回のインタビューでは、中沢 賢治さんに写真展開催の喜びと、その裏側にあった苦労、そして作品づくりへの思いについてお話しいただきました。

3年間、延べ90日。パキスタンに通い続けて見えてきたもの
――今回の作品を撮影するにあたって、苦労されたことを教えてください。
今回の作品展は、パキスタンで撮影した写真で構成しています。最初にパキスタンへ行った時から、気に入った写真がいくつかあり、できれば写真展にしたいという思いはありました。ただ、いざニコンのTHE GALLEYに応募をすることを考えると、まだ枚数が足りないと感じたんです。
そこから再び現地へ戻り、撮影を重ねることになりました。結果的に、3年間で6つのツアーに参加し、延べで90日ほどパキスタンに滞在しました。
――ツアーというのは、写真撮影のツアーですか。
はい。旅行会社さんが企画する撮影ツアーです。そうしたツアーに参加すれば、風景のポイントなどは確実に押さえられます。ただ、それだけだと参加者の皆さんと同じ写真になってしまう。
そこで私は、10日間ほどのツアーに参加したあと、さらに10日ほど現地に残るようにしました。残りの期間は一人で動きますが、安全上の問題もありますので、ガイドさんについてもらう形です。そうした滞在を何度か繰り返しました。

目指したのは「旅の記念写真」ではなく「作品」
――今回の作品を撮るうえで、特にこだわったことはありますか。
私はニコンの一眼レフを使い始めてから、だいたい10年ほどになります。最初の5年くらいは、地元の写真教室で一眼レフの使い方を学びました。その後、少しずつ「作品を撮りたい」という気持ちが強くなっていったんです。
今回こだわったのは、単なる旅の記念写真ではなく、どうすれば一枚の写真として作品になるのか、ということでした。旅先で見たものをそのまま撮るのではなく、自分の視点でどう切り取るかを意識しました。
――プリントにもこだわりがありますか。
最初の頃は近所のお店でプリントしていましたが、コンテストに出すようになると枚数も多くなり、費用もかかります。それで自分でプリンターを購入しました。
自家プリントの一番良いところは、自分が納得するまで何度でもやり直せることです。用紙を変えたり、モニターを整えたりしながら、自分が気に入る仕上がりを追い込んでいく。その過程も大事にしています。
ただ、今回の展示作品については、より確実な仕上がりにしたかったので、プロラボにお願いしています。グループ展などでも長くお世話になっているラボで、色校正の段階でもほとんど気になることがありませんでした。
――現像ソフトは何を使っていますか。
撮影はニコンのRAWで行い、現像にはLightroomを使っています。最近のLightroomはとても良くなっていて、表現の幅が広がったと感じています。

軽さは撮影意欲につながる
――使用機材について教えてください。
10年ほど前にNikon D5500で一眼レフを始め、その後D850なども使ってきました。現在はZシリーズを2台持ちしています。
1台にはNIKKOR Z 35mm f/1.8 Sの単焦点レンズ、もう1台にはNIKKOR Z 70-180mm f/2.8の望遠ズームを付けています。旅行中は1台を首から下げ、もう1台をバッグに入れて持ち歩くことが多いです。
以前はNIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR Sの大三元レンズも使っていましたが、だんだんカメラやレンズの重さを感じるようになりました。特に撮影ツアーのあとに現地へ残るとなると、3週間単位の滞在になります。機材が重いと、撮影意欲が少しずつ落ちていくんです。
その点、NIKKOR Z 70-180mm f/2.8は軽くて扱いやすく、とても気に入っています。旅の撮影では、機材の軽さも大きな要素だと感じています。

アイコンタクトで向き合うストリートスナップ
――現地の人々との関わりで印象に残っていることはありますか。
私はパキスタンだけでなく、インドのガンジス川やミャンマーなどにも行ったことがありますが、コロナ禍が明けてからはパキスタンに強く惹かれるようになりました。
なぜパキスタンが好きかというと、最近の自分の撮影ジャンルはストリートスナップに近いと思うのですが、日本でストリートスナップを撮る時は、どうしても緊張します。怒られるのではないか、嫌がられるのではないか、という思いがあります。
もちろん途上国でも嫌がられることはあります。ただ、子どもたちは私がカメラを構えただけで目を輝かせて寄ってきて、「撮って、撮って」という雰囲気になることが多い。そういう楽しい瞬間が生まれるんです。
大人の場合は半々くらいでしょうか。カメラを構えた時に、嫌な人は目をそむけますし、撮られることを面白がってくれる人もいます。現地の言葉は地域によってさまざまで、英語が通じるとは限りません。だからこそ、アイコンタクトを大切にしました。
この人は撮ってほしいのか、そうではないのか。その感覚を必ず確認してから撮るようにしています。

美しい光の裏側にある、厳しい環境
――撮影中、体調面で大変だったことはありますか。
現地では大丈夫だったのですが、昨年12月の撮影から帰国したあと、1か月ほど咳が続きました。気管支炎のような状態で、治るまでに2、3週間以上かかりました。
特に冬のパキスタンは、暖房などによるスモッグや煤煙が空気中に滞留します。太陽が美しいオレンジ色に見えるほどなのですが、その美しさの裏側には空気の悪さがあります。
今回の展示作品の中には、ゴミ捨て場で撮影した写真もあります。夜明け前からそういう場所へ行って撮影していたので、気管支をかなりやられてしまいました。
食事については、もともとお腹は丈夫でカレーも大好きだったのですが、今回はさすがに最後の方でカレーに飽きてしまいました。中華料理ばかり食べていたら、それも辛いものが多く、帰国後はしばらく食べ物を受け付けない状態になりました。

写真を始めたきっかけは、長い海外生活
――写真を始めたきっかけを教えてください。
本格的に一眼レフを始めたのは10年ほど前、Nikon D5500を手にした時です。ただ、それ以前から仕事で海外にいる期間が長く、25年ほど海外で暮らしていました。
最初はイギリス、その後はウズベキスタン、キルギスタン、マケドニアなどにもいました。仕事は開発銀行関係です。いろいろな場所へ行き、ポケットカメラでは写真を撮っていました。
ただ、当時の写真データはあまり残っていません。変色したものは捨ててしまいましたし、一部だけデジタル化したものが残っています。今思えば、もっと残しておけばよかったですね。
写真を「作品」として意識するようになったのは、定年後のことです。それまでは、あくまで旅先で記録として撮っているだけでした。

コンテストから、30枚組の作品へ
――コンテストへの挑戦についても教えてください。
一眼レフを始めてから最初の4、5年は、地元の鎌倉でお寺や花をどう撮るかを学んでいました。5年ほど経った頃から、腕試しをしたいという気持ちが強くなり、神奈川県内のコンテストなどに出すようになりました。
ありがたいことに相性が良く、フォトコンテスト神奈川では最優秀賞を複数回いただくことができました。それをきっかけに、単写真のコンテストだけでなく、30枚組くらいの作品として応募してみたいという気持ちが強くなりました。
初めて30枚組で応募したのは昨年のことです。その公募展で奨励賞をいただきました。今回展示する47点は、その時の作品と数枚重なっていますが、さらに新しいセレクトを加え、昨年12月に撮影した新作も含めた構成になっています。

写真展は、人との出会いを生む
――写真展をやることになって、良かったと感じることはありますか。
ニッコールクラブ事務局さんから合格通知をいただいてから、写真教室やいろいろな場所で「6月に個展をやります」と話すようになりました。すると、プロの先生をはじめ、多くの方から声をかけていただく機会が増えました。
個展をやるということは、いろいろな方との出会いが生まれることなのだと強く感じています。
たとえば、「鎌倉に住んで鎌倉の写真を撮っています」と自己紹介する時と、「今度ニコンプラザ東京 THE GALLERYで個展をやらせていただく中沢です」と言う時では、話のつながり方が違うんです。相手の受け止め方も変わる。今回、そのことを実感しました。

10年待たず、数年で発表してほしい
――これから写真展を目指す方へ、メッセージをお願いします。
私自身は、D5500で写真を始めてから今回の個展まで10年かかりました。ただ、今振り返ると少し慎重すぎたのかもしれないと思っています。
特に今回、個展をきっかけに多くの出会いをいただいたことを考えると、5年ほど経った段階で、たとえ立派なギャラリーでなくても、作品をまとめて発表する努力をしておけばよかったと感じます。
発表することで人との出会いが生まれます。そして出会いがあれば、いろいろな方からアドバイスをいただく機会も増えます。
ですから、私のように10年もかけず、数年でぜひ一度、自分の作品をまとめて発表してみてください。特に若い方には、早く挑戦してほしいと思います。

次の目標は写真集
今回、ニコンのギャラリーで展示させていただけることになりましたので、この作品群を中心に写真集をまとめる作業も始めています。早ければ11月頃には形にしたいと考えています。