【イベントレポート】ニッコールミーティングin東京
― 写真家としての「現在地」と「わからなさ」の中で撮り続けるということ ―
2026年1月18日、ニコンプラザ東京にて「ニッコールミーティングin東京」を開催しました。
本イベントには、写真家の大西みつぐ先生、秋山華子先生を講師に迎え、講演と参加者による作品講評を通じて、写真表現の本質に迫る充実した一日となりました。
大西みつぐ先生 講演
「写真家としての現在地」
大西みつぐ先生の講演では、ご自身が長年向き合い続けてきた「街」と「写真」を軸に、写真家としての歩みと現在の制作について語られました。

10代の頃にカメラと出会い、東京・下町を中心に街を徘徊しながら撮影を重ねてきた経験が、街写真家としての原点であることが紹介されました。1970年代に集中的に撮影された浅草の作品群では、日常と非日常が入り混じる猥雑で魅力的な空間を「ワンダーランド」として捉え、街を歩く中で生まれる感情そのものがシャッターを切る動機になっていたことが語られました。
また、若い頃には写真家・木村伊兵衛氏ら先達の作品を意識して撮影に励み、やがて同じ場所でも時代や人が変わることで自然と自分の写真になっていったというお話が印象的でした。

近年の取り組みとしては、下町と山の手を分ける崖線など「地形」に注目したシリーズや、川や橋といった「水」をテーマにした作品、さらに最新作「東方聖地」における、街に残る目に見えない気配や土地の記憶を写し取る試みが紹介されました。
街と共に歳月を重ねながらも、なお新たな視点を探し続ける姿勢は、写真表現の奥深さと継続することの大切さを強く感じさせられました。
秋山華子先生 講演
「わからなさの中で、写真を撮り続ける」
秋山華子先生の講演では、写真家としての迷いや葛藤を率直に語りながら、「分からなさ」と共に制作を続けることの意味が丁寧に語られました。

写真を始める以前から「見ること」に強く惹かれ、写真集を通して多くの作品に触れてきた経験が、写真制作の出発点であったことが紹介されました。
写真学校時代には、何を撮るべきか分からないまま撮影を続け、地元の奈良・吉野での撮影を通して「撮れるもの」と「本当に撮りたいもの」とのズレに悩んだ時期があったといいます。その後、街を歩きながら、自分が惹かれるものや違和感のある場面を静かに拾い上げる現在のスタイルが形づくられていきました。

大きな転機となった西表島での体験からは、「説明のつかない違和感」や「緊張感のある風景」に心を動かされる自分自身の感覚に気づき、特別な場所だけでなく、日常の中に潜む違和感を探すことが制作の軸となっていったことが語られました。
また、テーマを強く言語化しすぎない姿勢や、同じ場所に何度も通うことの重要性、展示やセレクトにおける独自の考え方についても具体的に紹介されました。
「悩むこと」「分からないこと」そのものを否定せず、制作の一部として受け止める秋山先生の姿勢には、会員の皆さんも共感されたのではないでしょうか。
マイベストショット講評
後半の「マイベストショット」では、参加者全員が持参した作品を1点ずつ紹介し、大西先生、秋山先生それぞれから丁寧なコメントが寄せられました。
作品を介した参加者と先生方との対話は非常に活発で、会場は終始和やかで熱気に包まれました。



おわりに
今回の「ニッコールミーティングin東京」は、技術論にとどまらず、「何を見続け、どう迷い、どのように自分の写真世界を更新していくのか」という、写真表現の根幹に触れる貴重な機会となりました。
二人の写真家の異なる歩みと視点は、参加者一人ひとりが自身の制作と向き合うための大きなヒントになったことと思います。
