会報誌・読みもの

サロン・ド・ニッコール カラーの部　1席

選評：ニッコールクラブ アドバイザー　小林紀晴

沖縄の宮古島で撮影された４枚の組写真です。南国の空気感がよくとらえられています。
ただ、それはけっして南国特有の暑さや弛緩した印象ではなく、逆にどこか緊張感が漂い
ます。憂いも伴っています。光をよく読んでいるからです。なかでも青い階段とまだ熟し
ていない青いバナナに差す光がとても魅力的です。静寂のなか、それらを凝視している作
者の気配を感じることもできます。すべて縦位置なのも、緊張感に深く関係しています。

サロン・ド・ニッコール モノクロームの部　1席

選評：ニッコールクラブ　シニア・アドバイザー　大西みつぐ

異色の作品です。まずはじっくり鑑賞すべきでしょう。「これはなんなのか」ということより
も、これらから想起されるそれぞれのイメージを大事にしましょう。タイトルは今ひとつです。
しかし抽象化されたグラフィカルな作品として楽しめます。写真表現の視覚的特性のひと
つである「質感」から広がる長い時間の変遷、さらには本来の看板が持っていたであろう「伝
える」という記号性など、これらが設置されていた場の風景も見えてきます。

ネイチャー・フォトサロン　1席

選評：ニッコールクラブ アドバイザー　三好和義

まず目を奪われたのは、利尻富士をバックにシカが群れている③のシーン。海を覆う雲海、稚内市街と緑の大地のコントラストという、見たことがない景色に圧倒されました。②のシャケが跳ぶシーンも、赤く色づいた体で飛び跳ねる姿をシャープにとらえ、奥にも同時にジャンプする姿が写っています。何ともにぎやかな秋の風景です。

ステップアップ・フォトサロン　特選

選評：ニッコールクラブ アドバイザー　秋山華子

夕暮れの海辺のやわらかな色彩が、美しい光をまとうガラスと溶け合うように写し取られ、時間の流れを閉じ込めているような印象です。アングルとタイミングにこだわったことで、奥に立つ人物のシルエットがバランスよく取り入れられています。二人の会話と風鈴の音や、このシーンで繰り広げられたストーリーを想像したくなります。夏の記憶や静かけさが息づく、情緒豊かな作品です。

ステップアップ・フォトサロン　特選

選評：ニッコールクラブ アドバイザー　秋山華子

温かみのある光に包まれたシーン。踊りの本番前に見せた自然な表情を見事にとらえています。主役を明確に据え、手前や奥に人物が入るように撮影したことで、人々の生き生きとした様子が一枚に収められています。「少女の笑顔はまるで灯された提灯のように、周囲をやわらかく照らしているようであった」という景山さんのコメントを拝読し、この作品の世界観により引き込まれました。

ステップアップ・フォトサロン　特選

選評：ニッコールクラブ アドバイザー　秋山華子

スクランブル交差点を行き交う人々に、スポットライトのような光が差し込む瞬間を視点で写した作品です。露出を暗めに仕上げたことで光と影の対比が際立ち、強いコントラストとモノクロの質感が、現実から一歩離れたような印象を生み出しています。都市に刹那的に集う人々の群像を客観的な視点で見つめることで、人間の存在の儚さと孤独を静かに浮かび上がらせた印象的な一枚です。