会場:ニコンプラザ大阪 THE GALLERY
2026年10月22日(木)~2026年11月4日(水)日曜休館
10:30~18:30(最終日は15:00まで)
京都の植物園で出会った、普段なら見過ごしてしまいそうな植物の姿に心を惹かれた上本恵一さんに、今回の写真展のお話を伺いました。

今回の写真展「吐息」は、どのような作品展でしょうか。 |
京都府立植物園で撮影した花や木など、植物をテーマにしたモノクローム作品です。約2年間撮影を続けてきたもので、温室で撮影した作品が中心になっています。
私は長年、手描き友禅の仕事をしてきました。以前は仕事に使う植物の図案をスケッチしていたのですが、カメラを使うようになってからは、写真で記録するようになりました。
もともと花は色で見るものだと思っていたのですが、あるとき撮影した写真をパソコンでモノクロームに変換してみたんです。すると、カラーで見ていたときとはまったく違う表情が現れて、とても面白く感じました。
それがきっかけで、植物をモノクロームで表現することに興味を持つようになりました。

植物を作品として撮り始めたきっかけを教えてください。 |
最初は、雨に濡れた植物の姿に惹かれたことがきっかけでした。植物園は自宅から近かったので、雨が降るとよく撮影に出かけていました。
そのうち温室にも足を運ぶようになり、日本ではあまり見かけない海外の植物や珍しい花など、さまざまな被写体に出会いました。
私は、きれいに咲いている花よりも、少し枯れかけた花や花びらが散った後の姿に魅力を感じるんです。虫に食われた葉や、傷んだ葉に雨の水滴がついている姿なども面白いですね。そうした植物を見つけることが楽しくなり、夢中になって撮影していました。
それまで作品としては街のスナップ写真ばかり撮っていましたので、植物をテーマに作品をまとめるのは今回が初めてです。

なぜ植物をモノクロームで表現しようと思われたのでしょうか。 |
カラーで見ると、枯れた花や虫食いの葉は、どうしても傷んでいる部分に目がいってしまいます。ところがモノクロームにすると、植物が持っている形や質感、細かな表情が違って見えてくるんです。
もちろん、すべての花がモノクロームに向いているわけではありません。花の色によっては、モノクロームにすると自分の思うような表現にならないこともあります。それでも、色をなくすことで初めて見えてくる植物の魅力があると思います。
今回の写真展では、そうした植物たちの普段とは違う表情を楽しんでいただければうれしいですね。

作品づくりで特にこだわったところは何でしょうか。 |
一番こだわったのは、モノクロームの明るさや階調の表現です。自分が見せたい部分を中心に、白の明るさや少し沈んだ部分の調子を、一つひとつ丁寧に調整しています。
特に気をつけたのは背景の表現です。背景を真っ黒にしてしまえば被写体は際立ちますが、私はあまり真っ黒な背景が好きではありません。周囲を少し暗くすることはありますが、背景の様子もある程度残すようにしています。その方が作品全体に柔らかさが生まれるように感じるからです。
自分の思い描く明るさや階調に仕上げることが、今回の作品づくりでは一番苦労したところですね。

今回の作品は、どのようなカメラやレンズで撮影されたのでしょうか。 |
カメラはニコンのZ50です。レンズは標準ズームのNIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VRと、NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VRを使っています。
私はあまり大きなカメラにはこだわっていません。手が小さいこともあって、軽くて扱いやすいカメラの方がいいんです。フィルムカメラの時代にはニコンF4も使っていましたが、やはり大きくて重かったですね。Z50は軽くて持ち歩きやすいので、今も気に入って使っています。

今回、THE GALLERYで写真展を開催しようと思われたきっかけは何でしょうか。 |
撮影した植物の作品をまとめて、写真仲間や先生に見てもらったことがきっかけです。作品を見てもらったところ、「面白い」と言っていただき、自分でも1度作品としてまとめてみたいと思うようになりました。
ニッコールクラブ支部キャラバンで、小林紀晴先生からも評価していただきました。それで、もう1度写真展に挑戦してみようという気持ちになったんです。
実は、2年前に写真展を開催したときには、これが最後の写真展になるだろうと思っていました。ところが、またこうして新しい作品がまとまり、写真展を開催できることになりました。現在82歳ですが、こうして新しい作品に挑戦できるのはありがたいことですね。

これまでの写真活動や写真展への取り組みについて教えてください。 |
以前は京都の街を歩きながら、スナップ写真を中心に撮影していました。
最初は写真コンテストにも応募していましたが、その後、先輩から組写真という表現方法を教えてもらい、複数の写真で1つのテーマを表現する面白さを知りました。
以前、作品を見てくださっていた方から、「いつまでも同じものを撮り続けるのではなく、1度写真展として発表して区切りをつけた方が、次の作品に進める」と言われたことがあります。その言葉が、写真展に挑戦する大きなきっかけになりました。作品を発表することで、1つのテーマに区切りがつき、また新しいものを撮りたいという気持ちが生まれてくるんです。

展示するプリントについて、特にこだわったことはありますか。 |
モノクローム作品なので、プリントの仕上がりには特にこだわりました。もっと深い黒の表現にも挑戦したかったのですが、思いどおりに仕上げるのは難しく、試行錯誤しました。
プリント用紙には、ピクトリコプロ・「ソフトグロスペーパー」を使用しています。半光沢の落ち着いた質感が気に入っているんです。光沢が強すぎるとコントラストも強く感じられるので、今回の作品には、柔らかな印象の用紙が合っていると思いました。
自分なりに納得できる仕上がりに近づけられたのではないかと思っています。

写真展に来場される皆さんには、どのようなところを見ていただきたいですか。 |
やはり、植物の細かな表情を見ていただきたいですね。枯れた花や虫に食われた葉も、モノクロームで見ると、カラーとは違った魅力が現れます。フレーミングによっても見え方が変わりますし、普段は気づかないような細かな部分にも面白さがあります。
特別な場所に行かなければ撮れない写真ではありません。身近な植物でも、見方を変えれば面白い作品になると思います。難しく考えずに、1枚1枚をじっくり見て、植物の新しい表情を楽しんでいただければうれしいです。

今回の写真展の後、挑戦してみたいテーマはありますか。 |
実は最近、64年ぶりに故郷の和歌山に戻ってきたんです。私の記憶に残っている和歌山の街は、昭和の頃の風景なんですね。ところが、久しぶりに歩いてみると、街の様子がすっかり変わっていて驚きました。
これからは、そんな和歌山の街を撮ってみたいと思っています。広い範囲を撮るのではなく、一つの地域に絞って、じっくり撮影してみたいですね。近くなので、自転車で出かけながら、気になった風景を撮っていこうと思っています。

これから写真展に挑戦したい方へ、メッセージをお願いします。 |
写真展は、ぜひ挑戦してほしいですね。
クラブの仲間にも、いい作品をたくさん撮っているのに、なかなか写真展に応募しない人がいます。私はいつも、「1度、思い切って出してみたらどうですか」と勧めています。私自身も、最初からすぐに審査に通ったわけではありません。何度も挑戦して、ようやく開催できた経験があります。
写真展を開催すると、自分の作品に1つの区切りがつきますし、見てくださった方からいろいろな感想もいただけます。それが次の作品づくりにもつながるんです。
そして、もう1つ大切なのは、自分の好きな写真を撮ることだと思います。わざわざ遠くまで出かけなくても、身近な場所に面白い被写体はたくさんあります。見方を変えれば、道端の石ころだって面白い写真になるんです。
私も以前は、作品をつくらなければという思いが強く、撮影が苦しく感じることもありました。でも、そういう気持ちから離れて、自由にいろいろなものを撮るようになってから、写真がもっと楽しくなりました。やっぱり写真は、楽しんで撮るのが1番です。シャッターを押すことが楽しい。それが何より大切だと思います。